息子たちが作ったワケのわからないテーマソングひっさげ、
7月の終わりに整体院を開業した。
「なんで、アメ玉なめながら、整体院やねん?」
「ゲンちゃん、なめながら じゃないばーよ。 なめなが!」
「はあ? なめなが? なんで?」
「なめながら って唄いにくいさー。アメ玉なめなが、せーたーいんっ♪ ワ〜!」
げらげら笑いながら唄ってる息子たちを見ながら、
う〜〜ん、わけがわからん。 けど、なんかおもろい。
だから、そのフレーズ口ずさみながら、自転車で毎日自分の整体院に通ってる。
ぼくが沖縄に来て一年。
まさか読谷で整体院を開業することになるなんて思っていなかった。
ぼくがここに来た時には、おなじ先生に師事する仲間が新しく整体院を開いたばかり
だった。彼はなかなか軌道に乗らない商売と自分の技術の自信の無さから、
酒を飲むたび弱音を吐いて酔いつぶれていた。
そんな仲間を励ましながら、しょっちゅう一緒に酒を飲んでいた。だから、おなじ小
さな村の中でおなじ技法の整体院を開くなんてことは、義理の上でもできることじゃ
あないし、考えてもいなかった。
彼の転機は、その友人自身が作った。
「ゲンちゃん、自分は口下手でこの技術の上等さをうまく説明しきれんからよー、
先生を招いて講演会を開きたいんだけどさ、手伝ってもらえんかなあ。」
ぼくは二つ返事で引き受けて、その友人と、整体の普及に努める先生の息子の3人で
チームを作って講演会の実現を目指した。
一回目のミーティングでは「もしこれがうまくいったらどうする?」ってテーマで集まって、
「新しい患者さんで予約がいっぱいでどうしよう?って飲み会を開くこと」を目標に据えた。
何度ものミーティングを経て、沖縄各地の仲間たちの協力を得て、講演会は無事成功した。
彼が作ったそのポイントが、それに関わったぼくにとっての転機でもあったことがわかったのは、
先生に開業を勧められたときが初めてだった。
「ゲンちゃん、あいつのところももう予約でいっぱいだよ。おまえも読谷で開業せんか?」
いくら先生がそう言ってくれても・・・と即答できずに終わったその数日後、
その友人は思いっきりの笑顔で言ってくれた。
「なんで―、オレはうれしいよー。おなじ仲間が近くで開業してくれたらさー。
お互い情報交換もできるし、自分が見きれない患者さんをゲンちゃんに紹介もできるさー!」
それから、たったひと月あまりで、
ぼくは 「せーたーいん♪」 の唄 を唄いながら通勤して、
整体師としてここに来る人と関わっている。
なんじゃ、こりゃあ?
「なんにも不思議じゃないさ。ゲンちゃんに起こることは、ゲンちゃん自身が発したものだよ。
今のゲンちゃんがあるのもそうだろ。もどって来たものを自分のじゃないって言ったって始まらんさ。
そのつもりでいつもいないと、せっかくのものを受け取りそこなうよ。」
エロ話好きで飲むと踊って唄う俗っぽいこの先生は、そんなことを言う。
余談だけど、今までぼくを指導してくれた人を思うと、聖なる話と猥談を
境なく話せる人に恵まれたと思う。
だから人間を好きでいられるし、こんな自分のことを好きでいられたんだと思う。
ほんと、ありがたいな。。。
そうかあ〜、
でも、あつかましいぼくは今まで受け取りすぎるくらい受け取ってるよな。
じゃあ、今まで自分のとこで止めてたいっぱいのものを、次にまわしていけばいいのかな。
そしたら、またぐるぐる回っていっぱい受け取れるじゃん、ウフッ☆
って思ってるあくまであつかましいこの自分はどうすりゃいいのかな。
でも、このバケツリレー、ずっと続いてきたみたいだし、
次になに入ってるかも楽しみだから、しばらく続けてみようか。
ぼくから渡されたバケツの中身、
なんじゃこりゃあ!?って怒ったりしないでね。
Gen.
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